大阪出張最終日、4つ下の弟と会うことにした。
彼は有名大学の大学院を卒業し、大企業に就職してからエリート街道まっしぐらだ。
お互い取り立てて話すようなことも無く、連絡も取っていなかったのだが、去年から僕の仕事が大阪の担当になったのをきっかけに何度か会っている。
去年会ったときは、実は結婚を考えている相手がいると聞かされた。当然うれしく思った。彼も30台半ばを超え、そろそろ身を固めねばと思っていたのだそうだ。
その時は「おめでとう、頑張れよ」と言って別れた。
しかし、今年に入り彼から電話があり、結婚に対する不安が日に日に大きくなっているとの事だった。新居の話や両家の顔合わせなど、次々と事が進む中、彼女との間に違和感のようなものを感じ、それを消せないどころかずっと頭から離れないのだそうだ。
彼はかなり弱っていた。眠れない夜もあるらしい。
これまでお互いにそう深い話をすることなく、いつしか年月は流れていた。
今、力になれるものなら全力でそうしたいと思った。
彼らの問題は当然2人の問題であり、周りがとやかく言うのもどうかと思うのだが、客観的に見て相手が事を急いでいるように感じた。2人の年齢、交際期間、外堀を埋めていく潔さとスピード、あらゆる情報がそう感じざるを得ないものだった。
弟は彼女のスピードに明らかについていけていなかった。温度差があるのは間違いなかった。何とか追いつこうとするのだが、すればするほど苦しくなる。その苦しみは聞いていて痛いほど伝わってきた。
2人の問題はもちろん2人で話し合い、分かり合うべきなのだが、どうも話を聞くとなかなか相手が取り合ってくれないということらしい。それで、一人で悩んだ挙句どうしようもなくて僕に相談してきたということなのだ。
相手を思う気持ちも分かる。しかし、自分の人生なのだ。他の誰のものでもないのだ。
自分の今の気持ちを包み隠さず相手に伝えて、一度じっくり話し合ってみることを薦めた。ありきたりの助言にはなってしまったが、相手のあることだ。彼女の気持ちも尊重するべきだろう。そして、その話いかんによって今後どうするか決めればいいと。
胸の内を打ち明けたら、だいぶ楽になったと言っていたが、かなり追い詰められていたのだろう。聡明な彼が、ここまで冷静さを欠き戸惑っている姿はその時初めて目にしたのだが、自分自身のことを一番に考えた結論を彼は導き出してくれることだろう。
その時はあらゆる手段で彼を応援してやりたいと思う。
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